[พ]映画「ゾンビ革命−ファン・オブ・ザ・デッド」/キューバ初のゾンビ映画はラテンのノリで @kun_maa
アレハンドロ・ブルゲス監督が公言しているそうなので本当なのだろう。
安っぽいタイトルにあまり期待はしていなかったが、これがけっこうおもしろかった。
40代のファンと友人のラサロはキューバで自堕落な生活を送っている。
働く気は0。人生それなりに楽しけりゃいいじゃないって感じ。
なんといっても社会主義国キューバだ。働かなくても国家が生活の面倒をみてくれる。
貧しくてもよければ無理に働かなくてもいいのだ(本当にキューバがそうなのかは知らんけど)。
ところがそんなある日、街中で奇妙なことが起こり始める。
人々が凶暴になり、人間を襲い始めたのだ。テレビでは、国営放送が盛んに「これはアメリカによる反革命的な攻撃である」と繰り返すが本当のことはなにもわからない。
なにが起こっているのかわからないままに、ファンたちは事態に巻き込まれていく。
その全てがいいかげんであまり細かいことは気にしないラテンのノリで楽しい。
ゾンビに対して、にんにくを食わせてみたり、身体に杭を打ち込んでみたり、即席の悪魔払いをしてみたり。挙げ句の果てに生きているなんの罪もない人を間違えて殺してしまったり。
どんどん増えていくゾンビたち。普通なら街を逃げ出すか、食糧や武器を集めて立て籠るか、もっと深刻に事態を考えて行動するのがゾンビ映画の常道というものだろうが、あろうことかこの事態を金儲けのチャンスにしようと「愛する人 殺します ファン殺人代行社」を立ち上げる。
うーん、さすがラテン系。なんかね、相手がどうやら人間じゃなくてゾンビらしい、噛まれると感染するらしいってことはわかっているのに、全然深刻さがない。
ゾンビの発生に困っている人からの電話で現場に徒歩で向かい、格安料金でゾンビを始末していく。武器もボートのオールや、鉈、ヌンチャクや手裏剣、パチンコやバットなど。
銃なんてもちろんもってない。でもメンバーは笑っちゃうほど戦闘力が高いんだよ。
登場するゾンビは基本ウスノロ系。中には動きが速いのもいるけど数は多くない。
次第に「ファン殺人代行社」のメンバーも襲われて死んでいくんだけど、なんか自然体というかノリが軽い。
事態の深刻さに比べて、雰囲気が深刻にならずにいつも明るい感じがするのは全体がコメディタッチで描かれているからか。
だからといってゾンビがないがしろにされているわけでもない。
描かれていく街の風景は深刻な状態そのものだ。
決してゾンビ映画をおちゃらけてテキトーに作っているわけではなく、ゾンビ的要素はしっかりと盛り込みながら、かといって全然深刻にもならず・・・なんなんだろうこの不思議な雰囲気は。作り手が楽しみながら作っている感じが伝わってくる。
監督はこの作品を、ゾンビ映画の枠組みを利用して、キューバという国の現実と、危機的状況に直面したキューバ人がどう行動するのかを皮肉も込めながら描き出そうとしているようだ。なんかちょっとわかるような気がする。
国営放送が、事態は解決したと繰り返す中、街は崩壊しどうしようもないくらいの数のゾンビに溢れかえっていく。もはや国を捨てて逃げ出すしかない。
ファンたちは無事に状況を打破できるのか。それとも・・・
ラストシーンは、けっこう気に入った。まあ普通じゃ考えつかない行動だけどね。
あれはキューバという国に対するファンの愛情表現なのかもしれないなと思った。
ファンよ、かっこいいぜ。彼こそ漢だ!
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