[พ]Another ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

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[พ]秘宝館という文化装置/残るはあと1館のみ?この大人の遊艶地にイカずに死ねるか @kun_maa

僕が中学生の頃、熱海の山の上に秘宝館というものができた。その頃僕は毎年家族で熱海に温泉旅行に行っていたのだが、「秘宝館」という摩訶不思議な名前がすごく気になっていた。

でも、熱海でどこかに遊びに行くときに親が一言も「秘宝館」に触れないこと、また何となく漂う大人の行くところ(つまり親に聞いてはいけない場所)なんだという雰囲気をひしひしと感じて、秘宝館のことを何も知らないまま大人になった今も訪れたことがない。あっち系のテーマパークみたいなモノなんだっていう印象だけが強く心に刷り込まれてしまっている。

そこで知的好奇心を満たす為にタイトル買いをしてしまったのが本書「秘宝館という文化装置」だ。タイトルと表紙がちょとアレなもので本屋で買うのが恥ずかしく、Amazonで注文した。

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本書によれば秘宝館の歴史は浅く、最初の秘宝館である「元祖国際秘宝館伊勢館」が開館したのが1972年のことである。

そもそも秘宝館とはなんぞ?という疑問がわくのだが、それについて本書での定義はズバリ「性愛をテーマにした博物館」である。

秘宝館は1970年代から80年代にかけて主として温泉観光地に開館し、人気を博した。秘宝館と銘打つ施設は、北海道から九州まで少なくとも二十館存在していた。1990年代以降に衰退し、筆者が調査を始めた2005年には7館にまで減少していた。そのあとも閉館は続き、14年2月現在では3館だけが残っている。北から栃木県日光市の鬼怒川秘宝館、静岡県熱海市の熱海秘宝館、佐賀県嬉野市の嬉野武雄観光秘宝館だ。14年3月には、大きな規模を誇る嬉野の秘宝館が閉館することが決まっている。(P.11)

なんと今年の3月に1館閉館してしまい、現在(2014年7月)では鬼怒川と熱海の2館しか残っていないということか。このままボケボケしていたら「性の博物館」であり「大人の遊艶地」である秘宝館という一世を風靡した大人の遊興空間を一度も見ることなく終わってしまうかもしれない。

こんな等身大人形ももはや見れなくなってしまった。

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こんなワクワクするような仕掛けも体験できなくなる日も近いのかもしれない。

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本書では2005年からの著者による各秘宝館の数値データや資料の調査と関係者へのインタビューなどを通して、次の2つの観点から秘宝館の歴史的意味を問うている。

第一に「複製身体の観光化」という側面から秘宝館を読み解く。すなわち、本物とそっくりな身体が模造・収集・展示され、そこを人々が訪れるという現象ーこれは秘宝館の大きな特徴をなしているーに注目してみたい。これは秘宝館を性の展示としてだけ読み解くことから出発するのではなく、秘宝館を「複製身体の展示」の文脈にいったん置いて考え直すという発想だ。秘宝館の起源や秘宝館の発達過程を考える場合、このことが鍵になるのではないかと、筆者は調査の途中で気がついた。

第二に、秘宝館の盛衰を観光のありかたの変化や日本の社会史的背景の変遷とあわせて考察する。秘宝館の成立・隆盛・衰退には理由があるはずだ。そこで筆者は、秘宝館を生み出した時代や人々、その歴史的条件にも注目したいと考える。(P.9)

1つ目の「複製身体の展示」、しかもそれが観光になっていくという点に着目して考察されていく部分は、医学模型や大正・昭和期に盛んに開催されたという「衛生展覧会」との関連と歴史的継続性に繋がるおもしろい考察だと思う。しかもそれを、多くの展示物の写真とともに明らかにして行くところがすばらしい。

秘宝館の位置づけと実際の展示内容がよくわかり、曖昧模糊とした秘宝館という存在のなかで、衛生啓蒙の立場をくみながら性的要素の開花へとつながっていく流れは非常にわかりやすく見えてくる。

2つ目の視点は、ある特定の時代に、温泉観光地という特定の場所に、同時多発的に成立し、ある特定の時代に衰退していったという実に不思議な秘宝館の存在と日本人の生活や余暇の過ごし方との関連をこれまたわかりやすく読み解いていく。

いずれの視点からの考察においても、多くの貴重な資料や証言、実際の展示や秘宝館の写真をふんだんに取り入れているからこそわかりやすく説得力のある考察となっている。

等身大人形と日本古来の性信仰、娯楽産業が合体した文化装置としての秘宝館に光をあて、貴重な記録とわかりやすい考察を行っている興味深い一冊であった。

読み終えたあと、こうしてはいられない。

早く秘宝館を実際に訪れなくては、という気持ちにさせられる本でもある。 

※残念ながら鬼怒川秘宝館が2014年末で閉館したとの噂を聞いた。本当であれば、残るは熱海だけとなる。これはかなり危機的な状況である。

秘宝館という文化装置

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